Home sweet home

おうちがいちばん

大島旅行記-5

元町港ターミナル

そういえば、まだ昼食をとっていない。温泉を出てあらためて食事処に腰を落ち着ける、というのもなんだか気が引けたので、元町港のターミナルの中へ、売店を求めて入っていった。

ターミナルの中からパンの匂いがする。見たところ、1階に店は見当たらないが、階段を上がっていくとフロアの角にイートインが可能なパン屋があった。普段はほとんどこう言ったところに入らない。パンは好きだし無性に食べたくなる時もあるが、街中のパン屋に入るのはなんだか避けてしまう。こういったところでしか入れないのだから、入る。

枝豆の入ったパンと、メロンパンと、あとなんだったかもう一種類のパンとコーヒーを買って、椅子に腰掛けた。意外と空腹だったのか、パンはあっという間になくなってしまった。そういえば、世間では塩パンが流行っているらしい。この店にも並んでいる。シンプルイズベストと言えば聞こえはいいが、小麦粉とバターといういかにも太りそうな顔をしているものを、塩味であっさりと食べたいなどというのはチグハグに感じる。どんなにお高くとまっていようと、枝豆のパンに勝てるわけがない、残念だが。

 

 

外に出てすぐの喫煙所で一服をして、海を眺める。時刻は16時前、もう今日やれることはないだろう。次の岡田行きのバスを待って、途中で下車して宿へ向かおう。バスの時間も限られている。なんだかんだ言いながらも、1時間以上元町港で過ごしてしまった私は、明日の予定を頭で組み立てながらバス停へ向かった。

 

食料の調達

バスは、今朝私が歩いてきた道を逆方向に進んでいく。あっという間に宿の最寄りのバス停まで到着した。最寄りとはいえ、このバス停から宿まではさらに20分近く歩かねばならない。さらに、宿は素泊まりでとってあるから、ひとまず明日の朝食を調達する必要があると。ちょうどよくバス停のそばに、大島ストアというスーパーがある。

私の父は、少し遠出すると、その地元のスーパーに行くのが好きらしい。地のものがあればおおと思い、全然関係のないものがあっても面白いんだそうだ。

朝通りかかった時はまだ開店していなかった大島ストアに入る。中に入ると、それはもうどこにでもある少し小さなスーパーだった。売っているものも、なんの変哲もない。というか来店しているお客さんを見ると、みんなスウェットにサンダルみたいな風で、地元の人のための場所なのだろう。菓子パン数個と塩キャラメルを買って出た。決して、塩パンのサブリミナルではない。

 

宿泊と起床

そして、気づくと朝だった。

 

 

いや、別に行き倒れたわけではない。

しかし昨夜のことについては、あまり特筆することはなかったのだ。

バス停から宿まで歩いていく道中は、ほとんど人家がなくて、舗装はされているがそれ以外の景色はほとんど獣道だった。たまに、誰かしらの別荘地のようなものを見かけた。

素泊まりでとった宿は、ちゃんと本音を言うならば、お金を払うのが惜しくなるほどのボロ宿であった。まだ日の暮れないうちに入ったところ、誰も先客がいなく、ご主人が部屋へ通してくれた。その時の部屋の感想について、友人に送った文章が残っていたのでそれをそのまま書く。

 

まず、部屋にハエ叩きがある。虫が出るんだろうということはもちろん予想できるが、床を見ると黒いシミが大量にある。タバコの不始末なのか、いやたぶん虫を潰した後な気がする。ふとちゃんと床を見ようと座布団をひっくり返したら、座布団が置いてある場所は、畳がテープで補修されている。いや、補修できてない。今度は隅にある座布団が怪しいのでめくってみると、やはりそこだけえらく汚い。全体的に部屋のものに埃が浮いているので怪しいと思ったら、枕もやはり埃が浮いている。エアコンは使い放題ではなくて2時間100円というシステム。テレビはブラウン管、デジタル放送が映らないのでチューナーが別にある。
極め付けは玄関に帯付きの万札が放置されていた。どないやねん。

 

まぁこれだけで十分だろう。私は早々に布団を敷いて、枕に顔をつけられるか悩んだ末にやめて、ここから脱出して今日泊まれる宿は他にないか真剣に調べ続けていた。ずっと風が強く、本当は夕飯を食べに出て行こうかと思っていたが、結局朝まで部屋から出なかった。

 

チェックアウトは好きに出て行っていいと言われていたので、他の部屋の人に足音が聞こえないように出発した。

 

 

昨晩も通った道。

まだ好天というほどではないが、早い雲が流れていて、その隙間から朝焼けの終わり頃の空の色がのぞく。樹木が風に流される音、そして何匹も鳥の囀りが、四方から聞こえてくる。

 

 

 

 

昨夜よりも少しだけ時間をかけて、スーパー近くのバス停へと向かった。