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おうちがいちばん

大島旅行記-2

元町港まで

岡田港から出発するバスを眺めている。バスはいきなり急坂に入っていって、木の影に隠れて見えなくなった。陸の方はすぐに小高い丘への登り坂になっているので、歩いて行くのは随分とくたびれそうだ。携帯で調べると、元町までは6.5km、1時間半と出てきた。雨風がこれだけ強くて、上り坂も多くて本当に1時間半で着くとは思えない。しかし、島中を歩くことは最初から分かりきっていた。そのためにトレッキングシューズも履いてきた。だからぐだぐだ言わずに歩けばいいのだ。

 

 

歩き始めてすぐ、港を振り返るとまださるびあ丸はそこにいた。

 

 

朝食をとりたいな、と思った。夜行船は何十年もあるのだから、朝からやってる食事処だっていくつかあるはずだ。観光協会のHPから、入れそうなお店を探したが、ルート上のお店はあらかた閉まっている。もちろん、ここを歩いている人など誰もいない。結局、岡田に着く日は、みんなバスに乗るか港の近くで時間を潰すのだろう。

飲み会の翌日というのはお腹が減って仕方がない。お酒が入ると満腹中枢が壊れて爆食いするというのが世の定説らしいが、私は全く逆で、食欲が失せてしまう。本当は酒にとても弱いのに飲みすぎてしまうので、お腹に何も入れないことで嘔吐を無意識のうちに防いでいるのかもしれない。いやいや、自分の体の無意識がそんなに優秀なわけがない。

元町へ向かう道は、バスのルートと全く一緒だ。港から坂を登りきる手前くらいに、小学生の時に泊まった民宿を見つけた。一人二人が出てきて、作業をしている。

 

 

本当に、誰も歩いていない。バスを待つ人もいない。

 

 

ただ雨の音だけがする。たまに、道を車が数台通るくらい。こんなところで死んでも、しばらく誰も気づかなさそうだなと思う。私はなんとなく道路とその周りの景観を眺めてしまう。大島はやはり東京都なんだなと思わされるほどに、道はしっかりと舗装されている。だからここで倒れても誰か見つけてくれそうな気もする一方で、しばらく歩いても店ひとつないからやっぱりダメな気もする。

しばらくして、レンタカー屋の前を通りがかった。やっぱり車を予約するべきだったかなと思った。バイクにしろ車にしろ、借りる値段はそれほど大きくは変わらないようだった。ただ、車を運転しながら、道の脇に路上駐車をして、カメラを出して、、、というそのまどろっこしさを思うと、やっぱり面倒で仕方ない。カメラを使いたければ、バイクがいいんじゃないかと思う。

スーパーを通り過ぎて、潰れたパチンコ屋を通り過ぎて、ゲートボール場?を過ぎて、ようやく元町地区に入った。

 

 

途中に大島高校があって、学生が手入れしているのであろう椿園が、校外の人に解放されていた。でもこんな早朝から、黒いマウンテンパーカの男が、高校に侵入してもいいものだろうか。他に人影はない。目的地に着く前に寄り道をするそんな気力もなく、高校の前のバス停の屋根の下で、買っておいたカロリーメイトを食べた。出港前の時間にコンビニに寄って、もし何かあった時に食事もできなくては困るなと思って買っておいた。それがまさか、1日目の朝から使ってしまうことになるとは。

それからしばらくまた歩いて、ようやく元町港へ着いた。どこか見たことのある食堂で、朝食にありつけることになった。